【86歳の後悔】70代に戻れたらやりたい8つの暮らし習慣|自宅で最期まで暮らす知恵

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【86歳の後悔】70代に戻れたらやりたい8つの暮らし習慣|自宅で最期まで暮らす知恵
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藤の花が垂れ下がり、ハナミズキの白や薄紅がすっと背筋を伸ばすように咲いている、四月下旬の昼下がりでございます。窓を開ければ、昼間の風はもう初夏の予感を含んでいて、庭の木々が日に日に葉を増やしていく様子に、時のはやさを感じております。

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お手持ちのスマホで聞き流ししながら、家事のお供にどうぞ。

シニア世代の片付け相談に応じております、すみ子でございます。今日は、取材でご縁をいただいた田辺小一さんという82歳の男性から伺った、胸に染み入るお話を皆さまにお届けしたいのです。田辺さんは、長年連れ添った奥さまを見送り、築48年の木造平屋で一人暮らしを続けてこられた方でした。けれども昨年の冬、畳と板の間のわずか2センチほどの段差につまずいて右膝を強打し、そのまま介護付きの施設へと入られました。

「明日でいい」を積み重ねた末に失ったもの

田辺さんがぽつりぽつりと語ってくださった言葉のひとつひとつが、私の胸にぐっと刺さりました。「もしあの時に気づけていたら、私は今もあの家で暮らしていたと思います」と、施設の小さな居室でおっしゃったのです。窓から見える景色はコンクリートの塀と駐車場だけ。季節の匂いも、朝の土の湿り気も、自分の台所の味噌汁の湯気も、もう遠いところへ行ってしまったと。

「大丈夫だろう、明日でいい」と先送りにしてきた日々のなかで、大事な習慣をひとつ、またひとつ失っていたことに気づかなかった。「いつか」を先延ばしにした人の体験談でも触れておりますが、田辺さんの後悔は、決して特別な人のお話ではないと私は思います。これからお話しする8つの習慣は、どれも今日から始められること。どうかあなたには、田辺さんと同じ道を歩んでほしくないのです。

1つ目、動かない時間が体を静かに弱らせる

田辺さんは70代の後半から、少しずつ歩くのが億劫になっていったそうです。近所のスーパーまで片道400メートル。若い頃は5分で歩けた道が、途中のベンチで一休みしないと辿り着けなくなった。「今日は疲れたから明日にしよう」と言い訳を重ねるうちに、外に出ることそのものが面倒になっていったとおっしゃいました。

気がつけば、家の中でも立ち上がる回数が減っていた。ある朝、布団から起き上がるのに5分かかった瞬間、ようやく気づかれたそうです。「体は使わなければ静かに衰えていく。それは年のせいではなく、動かなくなった時間のせいだった」と。

ほんの少しの動きでも、暮らしは変えられます。窓の外を眺めながら腕を振って足踏みをする。台所でお湯を沸かす1分半のあいだに、かかとの上げ下げを20回する。たったそれだけで、血の巡りが変わって気分まで明るくなるものです。無理をしないことは大切ですが、休みすぎないことも同じくらい大切なのですね。

2つ目、食事と水分を軽く見ないで

田辺さんは70代後半から、朝食を抜くことが増えたそうです。「お腹が空かないなら無理して食べなくてもいい」と思ううちに、気がつけば1日1食の生活に。お水も、トイレが近くなるのが嫌でつい控えてしまう。真夏でもコップ1杯のお水も飲まない日があったとおっしゃいました。

ある日、立ち上がった瞬間にめまいがしてテーブルの端をつかんだまま、しばらく動けなかった。その時に「体は食べたものでできている」という当たり前のことに、この年でようやく腑に落ちたそうです。

年を重ねるほど、食事と水分は体を支える柱になります。朝に納豆ひとパックと温かいお味噌汁一杯だけでも。お昼や夜には卵、お豆腐、お魚などのタンパク質をひとくちでも。喉が乾いていなくても、白湯をひとくち。これだけで驚くほど違うのです。

3つ目、頭を使う時間をどうか忘れないで

奥さまを見送られてから、田辺さんはテレビをつけっぱなしにしてぼんやり眺めるだけの日が増えました。好きだった時代小説の文庫本も、本棚の奥で眠ったまま。ある日、昔のアルバムを開いた時、写っていた友人I氏の名前がどうしても思い出せなかった。「胸の奥で警鐘のように感じました」と、田辺さんは目を伏せておっしゃいました。

何も考えなくていい時間はたしかに楽ですけれど、考えないまま過ぎる時間ほど、いつの間にか人を弱くしてしまうものなのですね。財布の中のお札と小銭の額を決めて買い物をする。朝に淹れるお茶の銘柄をいつもと少し変えてみる。カレンダーに一行メモを書く。そんな些細な工夫ひとつで、脳も心も「今日を生きている」と感じられるのだそうです。

4つ目、人との関わりを自分から断たない

奥さまが亡くなってから、田辺さんは「今更声をかけても変に思われるかな」と考えるうちに、月日があっという間に過ぎてしまったそうです。気がつけば、関わりのきっかけそのものをご自身の手で閉ざしていた。

久しぶりに昔の同僚N氏から電話がかかってきた時、声を出した瞬間に喉がかれているのを感じて、自分がどれほど話していなかったかに初めて気づいたといいます。1日誰とも話さないということは、声を出さないということ。声を出さないでいると、喉も心も少しずつ萎んでいくのですね。

散歩の途中でのご挨拶、ちょっとした立ち話、郵便局の窓口での一言。それだけでも、自分の変化に気づいてくれる人が現れます。今のうちに声をかけることは、いざという時の命綱にもなるのです。

5つ目、頼ることは弱さではありません

田辺さんは長い間、人に頼るのは恥ずかしいことだと思っていらしたそうです。掃除で腰が痛くなっても無理をして一人で続け、電球が切れたら脚立に登って自分で取り替える。そんなある日、脚立から足を踏み外して右膝を痛めてしまいました。

入院は長引き、退院した頃には歩くのも一苦労。迷惑をかけたくなかったはずのお子さん方に、かえって一番の負担をかけてしまった。「もしあの時、少しだけ助けてと素直に言えていたら」と田辺さんはおっしゃいます。

頼ることは弱さではなく、信頼している何よりの証。今は買い物の付き添い、電球交換、庭の草むしりなど、シルバー人材センターや家事代行サービスが1回2,000円台から頼める時代です。「生活サポート」「家事代行」と調べるだけで、すぐ近くに助けてくれる人たちが見つかります。

6つ目、住まいの安全を後回しにしないで

田辺さんが入院するきっかけになったのは、畳の部屋と板の間のわずか2センチの段差。何十年も生活してきた家で、毎日歩いていた場所でした。「慣れているから大丈夫だろう」と思っていたそうです。

足腰が弱くなってくると、それまで気にならなかった小さな段差が、思った以上に危険になります。夜中にトイレへ行こうとして足がもつれる、階段を降りる時に滑りそうになる。その度に「ヒヤッ」としながらも、まだ平気と自分に言い聞かせていた。けれどある夜、本当に転んでしまったのです。

今は自治体の住宅改修助成制度を使えば、手すりの設置や段差解消を1割負担で行える地域も増えています。「住宅改修助成 (お住まいの市区町村名)」と検索すれば、窓口がすぐ見つかります。家の中のヒヤッとする危険箇所を解消する16選もあわせてご覧くださいませ。

なぜ私たちは「まだ大丈夫」と思ってしまうのか

田辺さんのお話を伺いながら、私はずっとひとつの問いを考えておりました。どうして私たちは「まだ大丈夫」と思ってしまうのでしょうか。

ひとつには、昨日と今日の自分の差が小さすぎて、変化に気づけないこと。体力も気力も人との繋がりも、ある日突然なくなるのではなく、ほんの0.5%ずつ削れていきます。鏡を毎日見ていると自分の老化に気づきにくいように、日々の暮らしのなかの「できなくなった小さなこと」は、なかなか自覚できないのです。

もうひとつには、「頼る=負ける」という古い価値観が私たちの世代には染み付いていること。戦後の貧しい時代を耐え、子どもを育て、家を守ってきた方ほど、「自分のことは自分で」という誇りがある。けれど、その誇りが晩年の暮らしを縛る鎖になることもあるのです。

そしてもうひとつ、「動かない方が安全」という錯覚。無理をして転んでは大変だから動かないでおこう、という気持ちは自然ですけれど、動かないこと自体が体を最も早く弱らせるという事実は、案外知られておりません。脳は「安全に見える選択肢」を選びがちで、その積み重ねが静かに暮らしを削っていくのですね。

7つ目、地域の支援制度をそっと覗いてみる

田辺さんがお住まいだった市には、高齢者向けの移動支援、送迎付きの体操教室、そして地域包括支援センターという頼れる仕組みが整っていました。けれど当時の田辺さんは「まだ困っていないし、手続きも面倒そうだ」と、調べることすらされなかった。

いざ動けなくなってから知人に「地域包括支援センターに相談してみたら」と言われても、もうその時は玄関の段差さえ高く感じるほどでした。ケアマネージャーという言葉さえ、初めて聞いたほどだったとおっしゃいます。

もちろん今すぐ何かを利用する必要はありません。でも、どんな支援や制度があるのか知っておくだけで、安心感は大きくなります。散歩のついでに地域の支援窓口を覗いてみる、パンフレットを1枚持ち帰るだけでも、立派な備えになるのです。

8つ目、お金の備えを「どこに何のために」まで考える

田辺さんは「年金もあるし、貯金もそれなりにあるから大丈夫」と思っていらしたそうです。けれど現実は、入院すれば医療費だけでなく、雑費や交通費、退院後の介護や住まいの改修費まで、想像以上にお金が動いた。気づけば通帳の残高はみるみる減っていたと。

本当に大切なのは、たくさん貯金することよりも「どこに、どれくらい、何のために使うのか」を知ること。介護保険、医療制度、高額療養費、民間の見守りサービス。今のうちに調べておくだけで、立派な備えになるのです。

田辺さんが最後に気づいた「見守られる安心」

田辺さんとの取材で、もうひとつ心に残ったお話があります。施設に入って三ヶ月経った頃、以前の近所にお住まいだったM子さん(76歳)が、わざわざバスを乗り継いで会いに来てくださったそうです。「あなたが最近見えないから心配になって」と。田辺さんは、その時ようやく涙がこぼれたとおっしゃいました。「自分一人で生きてきたつもりが、こんなに心配してくれる人がいたんだと、初めて気づきました」と。

見守られる安心は、年を重ねるほどお金では買えない宝物になります。そしてその宝物は、日頃のちょっとした声かけや、回覧板を回す時のひとこと、ゴミ出しの朝の「おはよう」の積み重ねから生まれるもの。自分から閉ざしてしまうと、その糸はあっという間に切れてしまうのですね。

8つの習慣を支える小さな仕組みづくり

ここまで8つお伝えしましたが、頭で覚えておくのは難しいもの。私がご提案したいのは、冷蔵庫の横や電話機のそばに、A5サイズの紙を一枚貼っておくことです。そこに「朝の足踏み20回」「お水ひと口」「一日ひとこと誰かと話す」と書いておく。

それと、月の最初の土曜日を「暮らしの点検日」と決めて、電池、薬の期限、手すりのぐらつき、通帳の残高を一緒にチェックする。大きな改革は続きませんが、月に一度のチェックなら続きます。田辺さんも「こんな仕組みを、もっと早く作っておけばよかった」とおっしゃっていました。

あなたにはまだ時間があります

田辺さんは最後に、こう結ばれました。「私はもうあの家には戻れませんけれど、あなたにはまだ選べる時間があります」と。季節の移ろいを感じながら、自分の家で自分のリズムで暮らす自由。それを守るのは、日々の些細な選択の積み重ねでしかないのですね。

今日から始める「1日1動作」のすすめ

8つの習慣を一度に始めようとすると、必ず息切れします。田辺さんも「もしもう一度70代に戻れたら、毎日ひとつだけでいいから続けたい」とおっしゃっていました。おすすめは「1日1動作」。朝起きてすぐに窓を全開にして深呼吸を3回する日もあれば、昼食後にベランダで5分日光浴をする日もある。

月曜は足踏み100回、火曜はお水を3杯、水曜は誰かに電話を1本、木曜は本を10ページ、金曜は家の中の段差を1つ確認、土曜は通帳の残高をチェック、日曜はご近所さんにご挨拶。このくらいゆるい方が、かえって長く続くものです。完璧にやろうとせず、できなかった日は「明日できれば上出来」と手放す。この柔らかさが、70代80代の暮らしには必要なのですね。

この4月下旬、藤の花が咲くこの季節に、どうか玄関から一歩、外に出てみてください。ご近所の方に「おはようございます」とひとこと声をかけてみてください。お水をコップ一杯、意識して飲んでみてください。そしてキッチンの窓を少しだけ開けて、初夏の気配を含んだ風を胸いっぱいに吸い込んでみてください。その小さな一歩が、10年後のあなたの暮らしを守る大きな柱になります。最期まで元気に自宅で暮らす5つの知恵もあわせてお読みいただくと、今日からの一歩がより確かなものになります。田辺さんの8つの後悔が、あなたの8つの備えに変わりますように。そしてあなたの穏やかな日常が、ご自身の家で、ご自身のリズムで、どうぞ長く続きますように願っております。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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