【80歳でも脳が若い人の秘密】認知症を防ぐ毎日の4習慣と避けるべき4つのNG行動
花水木の白い十字が青空に映え、藤棚の下には紫の房がさらさらと風に揺れる2026年4月下旬。朝方はまだ上着が手放せない日もございますが、お昼時の陽射しにはもうすっかり初夏の気配が忍び寄ってまいりました。窓を開けると、どこかのお宅の庭からクレマチスの淡い香りが届き、雀たちが賑やかに囀っております。皆様、いかがお過ごしでいらっしゃいますか。
片付けマダムすみ子でございます。
先週のことでございました。生前整理のご依頼をいただき、埼玉県川越市のお宅にお邪魔してまいりました。ご依頼主は、今年93歳になられる杉本とし様。ご長男のK様(64歳)が「母ももう93ですから、そろそろ身の回りを軽くしておきたいと申しまして」とお電話をくださったのがきっかけでございます。玄関の引き戸を開けて迎えてくださったとし様は、背筋がすっと伸び、淡い藤色の割烹着をさらりとお召しになり、私の顔を見るなり「あら、すみ子さんね。お電話でお話しした通り、お茶菓子に最中を用意しましたのよ。お好きだとおっしゃっていたでしょう」と、3週間前の電話の内容を一字一句正確に覚えておられたのです。私は思わず息を呑みました。
93歳。それなのに、耳もよく聞こえ、目もお達者で、朝3時に仕込みをして旬の筍を炊いてくださる。リビングには読みかけの文庫本と、昨日の新聞を丁寧に切り抜いたスクラップブックが並んでおりました。「どうしてそんなに記憶がしっかりしておられるのですか」と伺うと、とし様は湯呑みをそっと両手で包みながら、こうおっしゃいました。「70代の頃からね、たった4つだけ毎日欠かさず続けているのよ。お金もかからない、難しいこともない、ただの水やりみたいなものなの」。本日はそのお話を、逆に脳を廊下させてしまう4つの見直したい癖と併せて、皆様にお裾分けさせていただきます。どうぞ湯呑みを片手に、最後までゆっくりお付き合いくださいませ。
第一章:90歳の脳は「鉢植えの植物」──毎日の水やりで息を吹き返す
最新の脳科学の分野では、「脳は何歳からでも活性化する」というのが、もう常識になってきているのだそうでございます。とし様の主治医の先生もおっしゃっていたとのことですが、脳というのは鉢植えの植物のようなもの。日々のこまめな水やりで調子が整い、長く元気を保てるのだそうです。逆に、水をやらず日陰に置きっぱなしにすれば、どんなに立派な鉢でも葉がしおれていきます。
「テレビの音量が前より少し大きくなった」「人の名前がすっと出てこない」「明らかに物忘れが増えた」。そんな変化にご自身で気づいていらっしゃる方も多いかもしれません。けれど大丈夫でございます。70代からでも、80代からでも、今日からでも十分に間に合います。とし様もこうおっしゃいました。「70歳のときに主人を亡くしてね、私もしばらくはボケたようになっていたのよ。でも一人になって、自分で自分の水をやるしかなくなってから、かえって頭がしっかりしてきたの」。一人暮らしになられてから、むしろ記憶力が安定されたというのは、実に示唆に富むお話でございました。
第二章:脳を老けさせる4つの落とし穴──まずはここから見直しを
落とし穴その1:水をあまり飲まない
年齢を重ねるにつれ、体の水分量は減り、喉の渇きにも気づきにくくなります。喉が渇いたと感じたときには、もうすでに隠れ脱水になっていることが多いのだそうです。私たちの脳の約75%は水分でできており、それはちょうど脳の潤滑油のようなもの。足りなくなると回転が重くなり、血の巡りが落ちて酸素や栄養が届きにくくなります。頭がぼんやりする、集中が続かない、人の名前が出てこない、そんな不調が起こりやすくなるのです。
対策はシンプルでございます。「喉が渇いてから飲む」のではなく、「合図で飲む」に切り替えること。起床直後、朝食、昼食、おやつ、夕食、就寝前、そして入浴後と運動後。1日6回から8回、1度にたくさんではなく、コップ1杯ずつを少しずつ。とし様は台所の棚に、小さな湯呑みを6つきれいに並べておられました。「飲み終わったら、ひとつずつ裏返しておくのよ。そうすると、今日は何杯飲んだかがひと目でわかるでしょう」。飲み物は水か、薄く出した麦茶がおすすめ。緑茶やコーヒーは利尿作用が強いため、楽しむ分量にとどめましょう。
落とし穴その2:テレビやスマホを受け身で長時間眺める
食事中につけっぱなしにしたり、手持ち無沙汰でスマホをスクロールし続けたり。受け身で眺めているだけですと、脳は家電の待機モードのように省エネ運転に入ってしまい、考える力・記憶する力・想像する力がじわじわ落ちていきます。これが習慣化しますと、思考力や情報処理力がじわじわと削られていくのです。
ただし、テレビそのものが悪いわけではございません。大切なのは味方の変え方。受け身から能動へ切り替える3つのコツとして、「内容を家族や友人に一言で伝える」「自分ならどう思うかの理由を1つだけ考える」「クイズ番組は答えを先に予想してみる」。受け取るだけから、一言出す、へ。それが脳にスイッチを入れる合図になります。
落とし穴その3:ネガティブ思考のループ
「どうせ私なんか」「あの時ああしていれば」「この先が心配で」。頭の中で同じ曲が延々と再生されているような、あの感覚でございます。そのループに長く囚われますと、体内ではストレスホルモンの「コルチゾール」が増え、記憶に関わる脳の働きに負担をかけてしまうのだそうです。つまり、心配ごとを繰り返すほど、物事を覚えにくくなる。そんな悪循環が起こりやすくなります。
とし様に倣った対処法は3つ。1つ目、「紙に一行」。頭の中の言葉をそのまま一行で外に出すだけで、驚くほど脳の負担が軽くなります。2つ目、「3分歩く」。家の中でも廊下をゆっくり往復するだけでOK。足が動くと注意の向きも自然に切り替わります。3つ目、「深呼吸を3回」。吐く息を少し長く、頭のモヤモヤを外に押し出すイメージで。
落とし穴その4:聞こえづらさを放置する
「テレビの音が大きいと言われる」「会話が聞き取りにくい」。そんなサインはございませんか。70代前半で約4人に1人、80代前半では半数以上の方が、日常に配慮が必要な中等度以上の難聴と言われております。さらに、難聴の方は認知症リスクが高まるという報告もあるのです。耳から入る刺激が細くなりますと、会話の機会も減り、脳への刺激まで薄くなっていきます。
まずは耳鼻科で聴力チェック。合う方には補聴器という選択肢もございます。最近は1万円台から購入できる小型で目立たないものも増えております。聞こえが整うと、会話が増え、笑顔が増え、それ自体が脳への栄養になります。
第三章:なぜ人は「年のせい」と片付けてしまうのか──心理の分析
さて、ここまで4つの落とし穴をご紹介いたしました。ただ、「わかっているのに続かない」「年のせいだから仕方ない」と、つい諦めてしまう方も少なくありません。なぜ私たちは、自分の脳の変化にフタをしてしまうのでしょうか。
ひとつ目の理由は、「現実を直視するのが怖い」という心理でございます。先日お話をお伺いした71歳のM様は、2年前にご主人を亡くされてから、だんだん物忘れが増えたことにお気づきでした。けれど「認めたら本当にボケてしまいそうで、怖くて耳鼻科にも物忘れ外来にも行けなかったのよ」とおっしゃいました。見て見ぬふりをすることで、一時的には安心できる。けれどその間に、脳への刺激はどんどん薄くなっていく。これが、ご高齢の方が変化に気づきながらも動けない最大の要因ではないかと、私は現場で感じております。
ふたつ目の理由は、「昔の自分と比べてしまう」という心理です。「若い頃は新聞を隅から隅まで読めた」「電話番号を50件そらで言えた」。過去の自分と今の自分を比べては、こんなはずじゃなかったと落ち込む。ですがこれは、60歳の肌と20歳の肌を鏡で比べて嘆くようなもの。意味がないのです。比べるべきは他人や過去の自分ではなく、「昨日の自分よりほんの少し良い今日」。とし様が93歳でも凛としておられるのは、まさにこの視点をお持ちだからでございます。
みっつ目の理由は、「始めても続かないなら意味がない」という完璧主義。毎日30分の音読をしよう、毎朝3キロ歩こう、と大きな目標を立てて三日で挫折してしまう。これは最も勿体ないパターンでございます。脳の水やりは、毎日コップ1杯で十分。量より頻度、完璧より継続が、脳を若く保つ最大の秘訣なのです。
第四章:90歳でも記憶力が冴える人の4つの習慣
習慣その1:声に出して文章を読む──「音読」の力
とし様が70代から続けておられるのが、毎朝5分の音読でございました。新聞のコラム欄、あるいはお気に入りの小説の一節を、小さな声でゆっくり読み上げる。それだけ。「子ども向けじゃないの」と思われるかもしれませんが、実は逆で、大人ほど黙読に偏りがちなので、声に出すだけで脳が効率よく動き始めるのだそうです。
音読は、目で読む・口で出す・耳で聞くを同時に使います。つまり入力と出力を同時に練習できる、とても贅沢な方法なのです。顎や口を動かし、声を出し、自分の声を耳で受け取りながら、脳の前頭前野にスイッチが入り、記憶が定着しやすくなります。一人暮らしのM様(71歳)は「今日は誰とも話さなかったわ」という日が続き、久しぶりの会話で言葉が出てこなくて愕然としたそうです。だからこそ音読は毎日ほんの少しで十分。小声でも、30秒だけでも、噛んでも大丈夫。完璧に読む必要はありません。
習慣その2:噛むことを意識する
少し意外ですが、脳トレをしたいなら、クイズを解くより先にまず「噛む回数」を増やしましょう。噛む刺激は顎から脳へ直接伝わり、血流が上がります。特に記憶や注意を支える前頭前野が働きやすくなり、日頃よく噛む人ほど認知機能が高い傾向があるのだそうです。さらに噛むと唾液が増え、口の自浄作用も働きやすくなります。口はまさに「脳の玄関口」なのです。
とし様は、朝食の筍ごはんを、1口につき30回ゆっくり噛んでおられました。「30回は多いわよね。まず最初の3口だけでいいの。どんなにお腹が空いていても、ゆっくりよく噛む」。歯ごたえのあるナッツやごぼうを選ぶ、一口ごとにお箸を1度置く、食事以外ならキシリトール高配合のガムを1日3枚から。今日の食事から3口だけ、顎から脳へカチッとスイッチを入れてまいりましょう。
習慣その3:朝、日光を浴びる
とし様は毎朝5時半に起き、必ず縁側のガラス戸を開けて、庭の木蓮をぼんやり1分眺めるのが日課でございます。朝の光は、体内時計のスイッチ。浴びるとリセットされ、日中は活動モード、夜は急速モードに切り替わりやすくなります。リズムが整えば、寝付きが良くなり、深い眠りが増える。そして質の高い睡眠は、記憶の定着に不可欠なのです。さらに朝の光は、幸福ホルモン「セロトニン」の分泌を後押しし、「今日もやってみよう」という意欲を高めてくれます。
やり方は簡単です。起きたらカーテンを開けて、窓辺で景色を1分ぼんやり眺める。晴れの日はもちろん、曇りや雨の日でも、外は室内よりずっと明るいのです。歯磨きの時は窓辺を見る、ご自分の朝のルーティンに結びつけると続きやすくなります。
習慣その4:就寝前のリラックス時間
とし様の夜は、驚くほど静かでございました。夜9時になると照明を落とし、スマホやテレビは見ない。手足や指を優しく揉みほぐし、軽くストレッチをして、温かいノンカフェインの白湯を少しだけ。目を閉じて、今日良かったことを1つだけ思い出す。「最中が美味しかった」「花水木が咲き始めた」。小さな1つで十分です。1日の頑張りを労う時間を持つことで、脳が落ち着き、呼吸が深くなり、寝つきがスムーズになるのだそうです。
第五章:93歳のとし様から学んだ、「今日から」の力
お別れ際、とし様は私の手をそっと握り、こうおっしゃいました。「すみ子さん、ね。若い頃に全部の準備をしておこうなんて思わなくていいのよ。今日一日の水やりが、明日の私を作る。それだけなの」。93歳の手のひらは、驚くほど温かく、私の両手をすっぽり包んでくださいました。
10年後、20年後の生き生きとした記憶力と豊かな毎日は、まさに今日から始まります。今日ご紹介した4つの中に、「これならできそう」と思えるものはございましたか。音読でも、水を1杯増やすでも、朝のカーテン開けでも、なんでも構いません。まずはたった1つ、あなたのペースで、焦らず楽しみながら続けてみませんか。何か始めてみようというその気持ちこそが、もうすでに脳を活性化させる素晴らしい第一歩でございます。
あなたの未来が、もっと明るく、健やかで、豊かなものになりますように。心からお祈り申し上げます。最後までお読みいただきありがとうございました。




